変則的ストーカー

最近残業が多い。土日は役場の仕事はしていないが、平日は残業になる日が多い。

残業と言っても19時~20時くらいなので、しんどいという程ではないが、計らずも残業になってしまっている。集中してタスクをこなしたいのだが、斜め後ろの次長が割と大きめの声で独り言ともとれる何かしらをつぶやいている。

話しかけられているわけではないため、聞かないようにして仕事を進めるのだが、だんだん声が大きくなって、終いには「あの件はどう思う? あり得んじゃろ」みたいな感じで、話しかけてくる。

大体が他部署や銀行に対する文句なのだが、何もない時は、その時のニュースであったり、最新スマホの値段が高いとか、極めてどうでも良い話を振ってくる。

どうも、ただただ話がしたいようなのだ。

いや、俺は残業を済ませて早く帰りたいわけで、今起こっているどうでもいいニュースや、スマホが高価であるとか、わかり切っている話をするために残っているわけではない。

仕方がないので、たまに会話をしてあげるのだが、肯定的に返すと「いや、あれはよくない」と否定され、こちらが否定的に返すと「そうはいっても相手にも理がある」みたいに、いずれに転んでもこちらの発言をほぼ確実に一旦否定してくる。そんな状況なので、話しても大抵不愉快になる。

なにより集中が途切れるので、仕事が進まない。

こりゃ、帰った方がマシだな。

そう思って帰り支度を始めると、次長も帰り支度を始める。

残業している部下や課長に挨拶して帰ろうとすると、「わしも帰ろ!」といって、一緒に帰ろうとするのだ。用事無いなら帰ってくれよ。そして、俺に合わせて帰るの、やめてくれんかな…。

最近のストレスは、このストーカーのように一緒に帰ろうとする次長である。

対処方法としては、残業せず帰ればよいのだが、定時前に担当課から質問や調査依頼がきたりするから、その対応をしていると、残業になる。

そして次長がもれなく残業に付き合ってくださるのである。

たまに次長のパソコンをのぞき込むと、インターネットのニュースサイトを見ていたりする。

いやマジで、帰ってくれよ。

何度か『一緒に残って頂かなくて良いので、先に帰ってください』と言ってみたが、「いや、わしも仕事が残ってるんだ」みたいに返される。

そう言われれば、これ以上は言えなくなる。

さすがに『ネットニュース見るのが仕事なんですか?』なんて嫌味までは言えない。

次長に『帰ってください』と言えるのは俺と課長くらいだが、それでも帰ってはくれた試しがない。

表面意識では「部下が残っているのに、自分が先に帰るのは忍びない」みたいに思っているようなのだが、本当は話がしたいだけ。の感じが透けて見えてくたびれる。

他の人間が帰っても、次長は帰ろうとしないが、俺が帰ると急に帰ろうとするので、イライラが増す。

もしかして、俺のことが好きなのか? まぁ好きなんだろうなぁ、と思う。

定年退職後に奥さんに付いて回る旦那のことを濡れ落ち葉というらしいが、俺は年金生活者ではないし、おっさんと結婚もしていない。なのに、俺には大きめの濡れ落ち葉がくっついている。

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