布の腰巻

今朝、暑い…と思いながら、出勤する準備をしていた。

服を脱ぎ、トランクス一枚になる。いわゆるパンイチという奴だ。

何気なく尻に手をやると、妙なダイレクト感が手のひらと尻の皮膚に伝わった。

何か、昨日からわかっていたような気はするが、このトランクス、破れていないか?

直視しないようにしていたが、その裂け目は広く、大きい。

普段大して使うことのない姿見の前に立ち、尻を映すと、斜めに大きなスリットが入り、臀部の40%程度の肌が露出していた。

…これはもはや下着の体をなしていない。

どうする?

このまま知らん顔してスラックスを履いてしまえば、ぱっと見はいつもの地下役人が完成する。トランクスが破けて半ケツであろうと、透視能力でもなければバレることはない。

うむ。

このまま履いてしまおう。そう思ったが、いや待て。

赤い下着を履いているとテンションが上がるとか、「愛を感じられない哀れなお前はピンクの下着を履け」とか言われていたことを思い出す。

見えていなくても外側ににじみ出るものがある、ということだろう。

40%くらい破れているトランクスを履いたままだと、何かとても情けないものがにじみ出てしまうのではないだろうか。

ちっ。

洗濯のサイクル的に残トランクスは存在しない。

いやしかし、今まさに干しているやつが使用可能ではないか。干された洗濯済みのトランクスを手に取ると、微妙に乾ききっていない感じがした。

これならいける。

出勤直前にトランクスを履き替え、生き返ったような気分になる。

やはり布で覆われている面積が大きいと安心感が違う。

床に転がっている破れた布の塊を、そっとゴミ箱に投函した。

ピンク色にするかは別として、次の休みはトランクスを買いに行くとしよう。

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