最近はまっている方位取り

とことん怪しい見えない力の話

最近…方位取りという怪しい術にはまっている。
吉方位に向かい、その土地に一定時間滞在し、帰る。概要はそれだけ。

御利益というのか効能というのか、金運とか、良縁、とか日程と方角によって、
あらかじめ決められている。

人間関係でつまづいて、相当凹んで立つ気力もなかったとき、

『そういえば今日は方位取りできる日だったな…』

と思い出し、御利益を確認すると、

「仲直り」

というものがあった。

これは…使える。
とはいえ、昨日気まずくなった人間関係が、吉方位に向かっただけで改善するものだろうか。

だが、何もせず悶々と一日を過ごすことになるのなら、
何かをやった方が気が晴れる。

座椅子に座ったまま、数時間虚空を見つめていたが、気力のようなものが回復してきた。
その気力を使って重い腰を上げ、方位取りに向かった。

今日の吉方位は「南東」。俺ん家から最速で1時間程度で海に突き当たる。
船を使えば南東に向かえるが、高くつくからノロノロ運転で南東を目指す。

あえて山の中の道を選び、ガードレールはおろか、アスファルトの舗装すらない、
パンクしそうなとがった石が転がる細い山道を進む。

うちの市域にこんな場所があるのか。
木の枝がトンネルのようになったアニメ映画のような道を抜けると、
数軒の民家が山間に建っていた。
庭の手入れ具合から、まだ人が住んでいることがわかる。

そんな場所を抜け、山を越えて海に出る。
海まで来れば、道は広くなり走りやすい。

しかし方位取りは2時間走り続ける必要があるので、
海岸線を遠回りしながらノロノロ走った。

ようやく2時間が経ち、近所の神社を探す。
そういえば初めて方位取りをした時も「南東」だったな。
その時に行った神社に行く事にした。

高宮神社という、海岸沿いにある、それほど大きくはない神社だ。
しかし、手水屋の横に小さな社があり、説明書きはないが恐らく祓戸だろう。
由緒書きには起源不詳となっていたが、江戸時代以前には少なくとも存在したようだ。

石の鳥居を2つくぐり、拝殿が正面に見える。
拝殿の後ろに立派な本殿があり、
ひときわ大きな摂社は穀神社…御祭神はスサノオさんだ。
小さな社も敷地内に複数点在していた。

気になって参ってみた小さな摂社には、名前が書いてあり、俺と同じ苗字の神社だった。
これまで聞いたことなかったが、そんな神社もあるのか。
同じ苗字の昔の人が何か頑張ってて神様になったのだろうか。

ちなみに本殿の御祭神は高皇産霊神さんのようだ。
ムスヒの神…仲直りにはこれほどふさわしい神様もいないが…。

方位取りに来たことを告げ、参拝は終わった。

海岸沿いの駐車場でパイプを吹かしたり、車で寝たりして時間を潰した。

そして帰宅し、その日は疲れて寝た。

翌日、連絡のなかった気まずくなった人と連絡が取れ、仲直りした。
心無しか、前より仲良くなれた気さえする。

いやこれ、本当に偶然なのか。
まじで効果があるのでは?
これだから方位取りはやめられない。

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