ふと、今の自分の係を眺めてみると、割と良い編成であると思う。
ゆったりと温厚な主査(係長級)、
頭の回転が超速いがネガティブ思考の主任、
自分の正しさに忠実過ぎるが真面目な主事、
柔らかい雰囲気で意欲もあり、今のところ欠点が見当たらない新人。
適当な係長の俺。
この5人でうちの係は構成されている。
うちは会計課だから、定型的な作業が多い。
朝銀行から収入金データをもらって、出来るだけ早くシステムに取り込み、
銀行が閉まるまでに支払いデータを作って伝送する。
要約すればそれだけ。
正しくお金を入れて、正しくお金を払う。
大して難しくもない。
ただ、毎日間違いなくやらないといけない、というプレッシャーが微妙にあることはある。
係員達は全員優秀である。
役所でこういう事は珍しい。
大体係に一人は問題児がいるものだからだ。
流石に金をダイレクトに動かす係だから、まともな奴をよこしてくれているのかも知れない。
ただ、自分の正しさに忠実な主事の女の子がいるのだが、彼女の噂は問題児扱いだった。
バイトの子にきつく当たって2人辞めさせただの、上司に逆らうだの、そんな噂があった。
人事の部署からも、「大変だと思うけど…」みたいに言われ、
彼女の同期の子からも、「係長なら大丈夫だと思いますが…」みたいに心配された。
異動前に、当時の上司とその話になった。その上司は彼女と同じ部署だったことがあるらしく、
「あれ(彼女)は大変で。気を付けぇよ!」
と言っていた。
俺はこの上司が好きではなかったので、『はぁ』と生返事をしたと思う。
実際、配下に持ってみて、なるほど自分が正しいと思うことは一直線にやるので、
その正しさから外れているものにはきつく当たってくる。
彼女は新人の隣の席で、新人に仕事を教える立場なのだが、
席替えをして新人を俺の隣にしようとしたところ、
「係長が新人の隣になるということは、新人の仕事は責任もって全部係長が教えるんですね!?」
と、結構強めの言い方で言ってきた。
何言ってんだコイツ。いつから隣に座ったやつが仕事を全部教える。なんていうルールになったんだよ。
『仕事の引継ぎなんて、席が離れてても出来るでしょ? 歩いて隣で教えんさい』
彼女は反論してこなかった。
まぁ、反論してきてもまず負けはない。
いや、勝ち負けではないな。「隣にいないと仕事が教えられない」という思い込みに対して、こうすれば出来るでしょ?って説明することが、この子には大事なのだ。
話せばわかる。馬鹿じゃないんだから。
こういう説明を、これまでの上司はしてなかったんじゃないだろうか。
彼女は言葉も強いし、押しも強い。
目上の人間にも割と突っかかってくる。
逆らわれることに慣れてない上司達は「うるさい奴だ、使えん!」ってなってたのではなかろうか。
まぁ、真相はわからんけど…。
何度か歯向かってきたから、その度に鼻を潰してやっていたら、
最近は従うようになってきた。
変に面従腹背するやつより、よっぽど使いやすい。
担当課の誤りとか、期限を守らせる必要のある通知とか、彼女にやらせているが、いい感じに相手を追い詰めるので、効率がいい。
それに事務仕事も出来るので、普通に優秀だと思うのだ。
何かうちの人事評価、的が外れている気がするんだよな。
まぁ、結果的に使える部下がいてくれるから、いいけどさ。
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