読心

そんなにたくさんの部下がいるわけではないが、部下には女子職員が多い。

これまでいい感じに軽口を聞いて来たりしていたのだが、
急にこれまでの関係性が嘘のように無反応になっていた。

仕事上の話はするが、基本仏頂面で応対はよそよそしい。

…な、何だ。

係内で合わないやつがいるから、機嫌が悪くなることはよくある。

「ちょっと聞いてくださいよ~!」

という感じで、
何かあれば俺に愚痴を言ってきたりしてきたのに、それもない。

怒っているのか、どうなのか。
いや、そもそも気のせいなのか。

合わない同僚とは目に見えて仲が悪いので、
2人の席を離すか、心がやられているなら無理やりでも休ませるか…?

よく働くやつなので、仕事が片付かなかったら残業することもしばしばある。
ある日、調子の悪そうなその女子職員が残っていた。

何でもいいから声かけてみるか。
『何やってんの?』

間髪入れず、目も合わせずに回答があった。
「予算です!」

普段聞くことのないような、低く抑揚のない声。
話し掛けるな。と言外にメッセージを発しながら予算資料を作っていた。
これはそっとしておいた方がいいかな。

答えが出ないまま、数日が過ぎた。

例の女子職員は、今日は割と元気そうに別の中の良い同僚と話していた。
おお、何かわからんが今日は機嫌良さそうだな。

少しほっとしながら、仲良く話していた同僚の方に声を掛ける。
『あいつ、今日は機嫌いいみたいで良かったよ。』

女子職員と仲のよい同僚が教えてくれた。
「この前、時間外に予算資料を作ってるってわかりきっているのに、
 『何をやっているのか』って言われたのがムカついたそうです。
 予算に決まってるじゃねーか。って。『頑張ってるね』って、
 褒めて欲しかったそうですよ」

な…。

数瞬、言葉を失った。

あんなに普通に話していたのに、あの一回の言葉選びの間違いで、
こんなに機嫌が悪くなるものなのか…。

教えてくれてありがとう。仲の良い同僚にお礼を言って、
しばらく反省していた。

人の気持ち、機微みたいなものが普通の人よりわかる気になっていたけど、
全然わかってなかった。

褒めて欲しかったのか…。

予算で忙しいのはわかっていたが、部下が作れないなら、
気合で全部自分で作ればいいか。
くらいに思っていたが、そういう話ではなかった。
発想から間違っていた。

声を掛けたとき以前から調子が悪そうだったのもあって、
ますます事態がわかりにくくなってしまっていた。
男女の差なのか、そんなもの関係ないのか。
それすらわからなくなってきたが、
人の心はわからない。

本当に意外というか、盲点というか、教えてもらえなければ絶対気付けなかっただろう。
一からやり直しだな。
何をやり直せばいいかもよくわからないけど…
もう慢心するのやめよ。

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