本当にあった怖い話…のような話。

職場で部下の係員から動画の表示方法について質問を受けた。
俺は半ば情報担当職員のような扱いなので、パソコン系のトラブルの相談は日常的に発生する。

部下のパソコンの横で、立ったまま操作していると、
隣の席の別の係員が画面をのぞき込んでいる。

この隣の係員も部下の一人だ。
思い立ったように行動して、よく問題を起こす問題児である。
自分と関わりのない仕事の話に首を突っ込んできて、
もっともらしい意見を矢継ぎ早にしたりする。

しかし、業務内容を把握していないので、的外れな内容で、
『ちょっと静かにしてもらっていいですか?』
というように、強引に遮らないとしゃべり続けるような豪傑である。

とはいえ、今回のトラブルは隣の席の問題児には関係ない話なので、対応を続ける。

どうやら、業者のページに埋め込まれている動画の画面が小さいから、
大きくしたい。ということのようだ。

埋め込まれた動画のURLをコピーして、別のタブに貼り付ければ…うまくいきそうだ。

不意に俺のわきの下の先から声がする。

「あ、違います!」

…え?
問題児の係員が何か大きな発見をしたように、大き目の声を上げた。

『何が違うんですか?』

一応聞いてみる。

「動画が違います!」

…いや、同じ動画から引っ張ったURLだから、同じ動画のはずだが。
操作を誤ったかな。
それにしても、この係員は情報機器には疎い印象だが…。

「ほら、こっちは5分なのに、こっちは21分!」

俺のわきの下越しに画面を見ながら、指差している。

新しく開いた動画が正常か確認するためにプログレスバーを触ったから、
動画の時間が5分ほど進んでいるが、動画の全体の時間は21分。

元になった動画も、新しくタブで開いた動画も、全体の時間は21分で同じである。

『同じだと思いますよ?』

努めて明るく返す。

「いや、違いますよ!」

…何なんだこのみなぎる自信は。
どこからやってくるのだろう。

動画が同じですよ。と、相談してきた係員も同意する。
そもそも、隣の問題児に話は振っていない。
勝手に入ってきて、俺の操作に逐一「違います」を連呼している。

『あの…そもそも動画とかネットとか、詳しかったでしたっけ?』

「いいえ!全然詳しくないです!」

力強い回答。

『何でそんなに自信満々に、私の作業を否定できるんですか?』

思い切って聞いてみた。

「え…なんででしょう?わかりません!」

と、自分でも驚いた顔をして、ケタケタと笑い始めた。

いや、怖いって。

この人が俺の部下の中で、最年長で職位も最高位なのである…。

前はものすごく腹が立ったものだが、
最近は笑えるようになってきた。

これからのことを考えると、全然笑えないのだが。

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