管理職の仕事は、とにかく決めることだ。と思う。

少し残業してしまったが、私用LINEをちょいちょい打っていたから、
今日は時間外は付けられないな…。

そんな感じで帰ろうとしていたら、課長と課長補佐が難しそうな話をしている。

何も時間外に話さなくてもいいだろうに…。

そう思いはしたが、まったく無視も出来ないので、少し話を聞いてみた。

どうやら、押印を廃止することについて、会計管理者から早く進めるように指示が出たらしい。
しかし課長は押印の廃止をすると、請求書の偽造が容易になるため、押印廃止の導入は時期尚早と考えている。
課長補佐は、廃止でも継続でも良いが、双方にメリットデメリットがあって決められない。

みたいな話だった。

「エムさんは電子請求の会議に出てもらうから、押印廃止の話にも入ってよ」

まぁ、電子請求の会議には出るが、押印廃止の話とは直接つながらない。
全く無関係ではないが、電子請求書に電子の押印を認めるなら、押印廃止は別次元の話になる。

俺はそれより気になる事があった。

『結局、課長はどうしたいんですか?』

押印廃止には反対なのか。反対だとしたら、なぜ反対なのか。
会計管理者が肝入りで進めているのだから、反対するにも理由が必要だ。

「会計管理者は、押印廃止すると”楽になる”って言うのよ。でも私はそうなると思わない」
「審査するみんなも、楽になるとは思えない。って言ってるし…」

なるほど。

『では、会計管理者は何がどう楽になる、と言っているのでしょう?』

伝票を作成する担当課が楽になるのか、
伝票を審査する会計課が楽になるのか、
請求書を提出する業者が楽になるのか、

トータルのメリットと、課長の思うデメリットをぶつけて、
総合的にどちらが”楽になる”のか?

『論点がまとまっていない気がします。あと、係員が言ってることを
 全部真に受けてたら決められないですよ。課長がどうしたいのか、です。』

毎回思うが、課長のやりたい事、言いたいことがわからない。
抽象的な方針は出ているが、課長自身の方針が固まっていないから、具体的指示が出てこない。

「考えてみる!でも考える時間がなくて…」

はぁ。やっぱり決めてないな。
ほんとに要領を得ない。

どうしたいのかを決めないと、議論にならないし、
反対するなら根拠がいるが、導入にかかるコストとメリットの比較もしてない状態で、
感覚だけで是非を決められるわけがない。

課長がトップなら感覚だけでも決められるが、会計課のトップは会計管理者である。
意向に逆らうならそれなりの準備が必要なのは当たり前だ。

要約すれば…。

「会計管理者の方針に反対だけど、論理的に説明できないから説明できる資料を作って」

と言っているのだろうと理解した。

『申し訳ありませんが、締め切りが切迫している業務もありますので、
 まずは論点の整理をしてはいかがかと…』

俺に考えさせる…決めさせるんじゃなくて、自分で決めてよ。って言いたいのだが。
課長は何かを考えるそぶりをした後、口を開いた。

「指定金融機関との打ち合わせも明日あるから、頼むわよ!」

ああ、わかってますよ。
でも今、関係ないし。
課長に自ら決めてもらうように促すとか、課長が苦手そうなことをお願いすると、
大体関係ない話を振ってくる。

何か、誤魔化そうとしてないか…。

何だかなぁ。

たぶん、俺が本腰を入れれば、押印廃止も、押印廃止をしない選択も、どちらも実行できると思う。
それは能力もあると思うけど、『決める』っていう意思の力だと思っている。

決めればいいのだ。
間違っていたら、謝って訂正すればいい。
決めない事には何も進まない。

余りこういう話をしてしまうと、課長はいじけてしまうので始末が悪い。
やってあげてもいいが、そうすると俺は毎日残業しなくてはならなくなる。

今の仕事を早めに片付けて、俺は残業せずに帰りたいのだ。

そもそも押印廃止の話は、去年からあーでもない、こーでもないと、
会計管理者と課長で議論している話である。

1年以上議論してるんだから、てめーらで論点整理して結論出すくらいやれよ。
と思ってしまう。

そして会計管理者に論負けするなら、職位が下なんだから従うしかない。
気に入らないなら自説で打ち負かせよ。
会計管理者だって、愚痴ばっかり言うおっさんだが、筋が通っていれば聞いてくれる人だ。

…って思うが、たぶん課長ではそれはできないだろう。
人に説明するのが絶望的にヘタクソだからなぁ。

でもこればっかりはまだ手伝えない。

家でギターの練習もしなきゃいけないし、
魂も浄化しないといけないし、
何より…俺は今人生が忙しいのだよ。

しょうもない痴話げんかに首を突っ込んでいる余裕はないのだ。
(正確には「痴話げんか」ではなく仕事だが…)

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